このブログは、出版業界の人が多く読んでいるようだ。当然、ライターやライター予備軍も多いだろう。そんな諸兄に有益な情報をひとつ。過日、週刊誌編集長も経験したA氏が大手出版社を定年になるというので飲む機会があった。彼によれば「嫌われるライター」には、3種類あるという。
めったにこんな本音トークは聞けないので、貴重な体験だった。
まず、「金を借りて返さない人、つまり金にだらしない人」は、「仕事を出す、出さない以前の問題」だという。
「実際、ライターから金を貸してくれという話があったときは、《やっと切るタイミングがきたか》と思っていました。なにしろ、ほぼ100%の人が返してくれないのです。編集者がライターに金を貸すとき、それは仕事を切るのにとても効果的なカードを握ったということなのです」
つまり、嫌われるというより、仕事を切るという観点で考えた場合に金を貸すというカードは有効だという。ゆえに編集者は「金を貸してくれ」と馬が合わないライターが言ってきた時に、フフフとほくそ笑むというわけだ。
最近では「原発の取材に行くので」と編集者に金を借りまくり、じつはずっと東京にいたというツワ者ライターがいて、2チャンネルで叩かれてまくっている。こういう輩は業界には、永久に帰着できえないだろう。
2つめのタイプは、「人の悪口を言う」ライターである。
「誰が誰の悪口を言っていたなんていうのは、すぐに業界内で話が出回ります。ですから、悪口を言った人はどんどん世界を狭くしていると見たほうがいい。そもそも、自分の悪口を言うかもしれない人には、発注したくないものです」
3つめのタイプはどうだろうか。
「仕事がまだ終わっていないのに、クライアントに文句を言うタイプがとても多い。全部終わってから言えばカッコいいのですが、文句を言えば自分の立場が優勢になると思っている人が多すぎて辟易しますね」
はっきり言って「仕事がない」というライターほど、自惚れからか、他人の記事に対して手厳しい批評を加え、さも自分が実力があるかのように吹聴するものだ。
A氏が最も我慢がならなかったのは、どんなライターか。
「締切りを守らないのが大物だと勘違いしている男がいた。すぐに説教して、1時間以上遅れたら切る、と伝えた。案の定、締切りまでに原稿が来なかったね。締切りを厳しくすると、ある程度、実力派とそうではないライターと分別できるかもね。間に合わない奴というのは、突きつめれば結局、ライターには向いていないのさ」
小生にも反省点が多々ある。じつに、現場というものは厳しい。編集者ならではの視点というものが、よくわかった夜だった。
(渋谷三七十)