橋下徹大阪市長が率いる大阪維新の会は、衆院選向けの公約集「船中八策」の骨格を、13日に発表した。首相公選制の導入など注目すべき点は多々あるが、ベーシックインカムも提唱されている。ベーシックインカム (basic income) は最低限所得保障の一種で、政府がすべての国民に対して、最低限の生活を送るのに必要とされている現金を無条件で定期的に支給するという制度だ。
橋下市長は、ツイッターで次のように説明している。
「ベーシックインカムが成立すれば(これは不可能な政策と言われています)、年金制度、生活保護制度、失業保険制などを失くす可能性を考えることができる。それにまつわる組織が不要になるのです」
「また家計を助ける色々な助成制度(家賃補助、保育料補助、幼稚園料補助、医療費助成、就学援助、私学助成、塾代助成、子ども手当その他諸々)がありますが、それも一本化できる可能性が出てくる」
広がる経済格差については、もっぱら経済のグローバル化からの説明がされるが、全産業のIT化も大きく関わっている。
簡単な話、昔は読み書きそろばんができれば仕事ができたが、今その程度の頭脳労働はITがやってしまう。
昔は駅の改札の一つ一つに駅員が立ち、切符にハサミを入れていたが、今はITがやっている。
インスタントラーメンの工場を見学したことがある。すべての工程がオートメーション化され、一日数万食生産する工場全体を10人足らずで管理していた。どんな産業分野でも大きな工場は、多かれ少なかれ、そのような状態だろう。
ITによって仕事は極端に少なくなり、簡単な頭脳労働から始めて仕事に習熟していく、ということができなくなっている。
IT化は製品の低価格化にも繋がっているが、企業に多大な収益ももたらしている。
この利益は、企業が抱え込んでいていいものだろうか?
IT化は一部の技術者や経営者だけの成果ではない。それを可能とするだけの収益を企業にもたらした、従業員全員の成果であり、社会的資産だ。
これをベーシックインカムという形で社会に還元するのは、理にかなっている。
もう十分に社会に貢献したという者は、ベーシックインカムで安寧を得てもいいだろう。
ITにはできないクリエイティブな頭脳活動をするためのトレーニングの時間を得るために使ってもいいだろう。
営利に還元されない活動に向かうために使ってもいいだろう。
ベーシックインカムは、確かに世の中を変えうる構想だ。
産業革命によって市民革命が起きたように、生産様式の転換によって社会のあり方も転換するというのが、カール・マルクスが唱えた歴史観。
ITの登場によって生産様式は革命的に変化しているのであるから、今こそ社会は変わるべきだろう。
橋下氏はツイッターで共産主義という言葉を使っている。
「そして誤解をしちゃいけないのは、ある一定のラインまで(給付額まで)は超共産主義的制度だが、それを超えると自由主義が徹底されるという価値観。ベーシックインカムまでは社会全体で富を分け合う。しかしそれを超えると能力や努力で差が出てくることを容認するという考え」
「共産主義と自由主義のミックス型。国がある程度のレベルになるまでは公が一方的に供給する必要がある。しかし今の日本のレベルになるとほぼ社会の仕組みが成熟し、これ以上の『無理な』発展を望む必要がなくなってきた。もちろん普通の発展は必要ですが」
ベーシックインカムには賛成できるのだが、橋下氏が共産主義を言うと、スターリンを思い出してしまうのは、なぜだろうか。
(FY)