「閣僚が選挙活動に抵触する書類にサインするとは、あいた口がふさがらない。一度、全員の閣僚を集めて心構えでもレクチャーしたらいいのでは」とベテランの政治ジャーナリストが言う。
前田武志国土交通相は4月17日午前、衆院国土交通委員会に出席し、岐阜県下呂市長選で特定候補の支援を依頼するサイン入りの文書を郵送した問題について「誠に軽率であり、深く反省している。今後この反省の上に立って職務の遂行には慎重を期していく」と述べ、陳謝した。その上で重ねて辞任を否定した。
前田氏は衆院国交委で、文書の作成、郵送について「私は関与していない。私自身も思いも寄らないような内容の文書が、思いも寄らない形で使用された」と関与を強く否定した。4月11日の衆院国交委では、文書にサインした場所を「議員会館の事務所」としていたが、「国交省の大臣室」と訂正した。
「自分がサインした場所も覚えていないのだから、問責は当然だろう。仙谷みたく健忘症とでもいうのか。ケンボウじゃくて、“権謀術数”ではないかね」(自民党関係者)
今、国交相の役割は重い。そもそも民主党は、マニフェストの1丁目1番地である八ツ場ダム建設中止の政策をあっさりと捨てた。政権の交代のシンボル、観光庁の長官の民間採用もなかったことにしたいようだ。
「野田政権は、撤退を『転進』と言い換えるような、戦時下の日本の大本営発表を思わせる姑息さが目立つ。地方議員は支持者にまで『いさぎよく解散せよ』と詰められています」(地方新聞記者)
そんな中、仙谷由人政調会長代行は「原発を止めた場合、経済と生活がどうなるかを考えておかなければ、日本がある意味で集団自殺するようなことになってしまうのではないか」と発言した。
おやおや? 日本の原発をベトナムやインド、中国にまで売ろうと画策していた御仁ならではの危険な発言である。
「今の民主党政権は、リーダーが不在の野球チームに似ている。場面に関係なく、年棒のためにホームランを打ちたいヤツがいれば、バントして脚力を見せつけたい人もいる。全員野球にはほど遠い、つぎの選挙のための動きと発言に終始しています」(全国紙政治記者)
前田国交相は「辞めない」と発言している。
「それはそうですよ。国交大臣の次の人材がいない。小沢グループからだれか出しますか? 出せば噴飯ものですよ」(民主党議員秘書)
まるで小学生の学級会のような野田政権。野田首相は、閣僚さえまとめれば、政権危機を乗り越えられると考えているようだが、支持者のみならず、日本中がもうしらけ切っている。
知恵がない、人材がない、モラルがない。もはや野田政権は「無い閣」と成り果てたのである。
(渋谷三七十)