石原都知事が尖閣諸島の購入に動き出した。東京都庁内に専従組織を発足させ、年末にも購入議案を出す予定だという。石原氏は「おそらく国はなにも言ってこない。国が本当にやる気なら譲る。本来ならば国が買い取るべきこと。安倍内閣もオファーしたが仕方が間違っていた。国の役人はずさん。現場に行かず持ち主の事情も知らずに言うからはねつけられる」と語っている。報道によれば、安倍内閣だけでなく、鳩山内閣のときも使者が「好きなだけ金額を書いてください」と地主に小切手を差し出して断られている。

さいたま市に在住、沖縄県・尖閣諸島の大部分を所有する栗原國起(くにおき)氏の弟で、栗原家のスポークスマン的な立場の栗原弘行氏が2012年4月19日、都内でニコニコ動画のインタビューに応じ「石原氏はぶれない」と発言。
「地主である栗原氏と石原の距離は近い。かなりの確率で合意するだろう」(地元の不動産屋)

栗原国起氏は、旧大宮市では「栗原家の土地を踏まないと大宮駅までたどり着けない」とまで言われた大地主である。ところが栗原家には、少なくとも「探られたくない過去」がある。さいたま市寿能町にあり、栗原家が経営していた結婚式場「菱屋会館」は、経営不振で撤退。そのビルに、強引な勧誘と拉致でたびたび逮捕者を出しているカルト教団「冨士大石寺顕正会」の全国本部を、東京・板橋から誘致したのだ。

顕正会の勧誘の手口といえば、車に軟禁する、マンションに閉じ込めて入会するまで返さない、辞めたいと言うと暴力をふるう、と地元の大宮署だけなく、埼玉県警察本部にも苦情が殺到していた。
「顕正会は、92年以降、強引な勧誘で、逮捕者が20人を超えているほどの危険な団体で公安もマークしています。埼玉と同じく活動が活発な神奈川県警察には600件を超える相談が寄せられているうえ、『青田狩り』で中学や高校生を狙うので、教育委員会にも多数、相談が寄せられているのです」(教育関係者)

たびたび、本部に捜査が入るので嫌けがさしたのか、栗原家は06年に「菱屋会館」の建物から顕正会を追い出した。すると顕正会は、これみよがしに「菱屋会館」のすぐ裏に土地を購入し、全国拠点として代わりのビルを建てた。
「地元では、栗原家は、おとなしい地主として知られ、反社会集団とのつきあいも聞かない。ところが、暴力勧誘で知られる団体を誘致したことは、地元ではたいへんなイメージダウンとなっています。それをぬぐいさるためにも、尖閣諸島を早く石原都知事、もしくは国に売ってしまいたいのでしょう」(地元の自治会員)

かつて、政界のフィクサーともつながりが指摘されていた栗原国起氏は、愛国者として知られる。ある人物が別の不動産を買い取る相談をしにいったところ「国益」という単語を連発し、尖閣を守る話をされたそうだ。
石原都知事は言う。「自分の家に強盗が入ってきたら、主人は素手でも戦わないといけない。暴力沙汰に及ぶからと、全て譲ったところで済むのか。中国がもし軍隊を派遣したら、紛争になり、即座に日米安保が発動する。日本は、アメリカとも協力し、場合によっては日米安保を踏まえて、ものを言えばいい。国が頼りにならないから東京がイニシアチブをとる。まちがっていると思う日本人がいたらお目にかかりたい」

どうもこの騒動、石原は一見、かっこよく見える。しかし、栗原氏がやってしまった「カルト教団誘致」のエラーを石原氏は知っているのか。さいたま市では教育委員会で問題になるほど、顕正会の強引な暴力勧誘はヒートアップしているのだが。

(渋谷三七十)