「超再現! ミステリー」(日本テレビ)を見ていて憤然とした。ミステリー小説を再現ドラマにして、スタジオにいるタレントに犯人当てをさせていたのだ。
「ミステリー小説を1時間にも満たない再現ドラマにして、犯人まで教えるというのは、本格的なミステリーファンから見たら邪道そのものだ。テレビのスタッフは思考停止しているのか。本当に番組作りをあきらめているな。すぐにやめていただきたい」(ミステリー愛好家)
ミステリー小説や推理マンガなどのミステリー作品を再現ドラマ形式で映像化し、スタジオゲストがその映像を観て謎解きを行う。なお、ドラマの結末を知っているのは徳井義実だけであるため、MCの綾部祐二と紗栄子も謎解きに参加するスタイルだ。
「第1回の放映は、『蜜蜂のデザート』(拓未司:著)でした。ビストロで起こる、料理人ならではの怨嗟やプライドが交錯するミステリー小説でしたが、肝心な動機についてはまったく表現されていない。失敗でしょう」(テレビ局関係者)
再現ドラマは出題編と解答編に別れており、出題編の後でスタジオゲストが相談して解答を1つに決めてから解答編に進む。解答編の終了後、正解なら「推理的中! 犯人逮捕!」となり、不正解なら「誤認逮捕!」となる。
「著者である拓未司氏は、大阪あべの辻調理師専門学校を卒業し、その後も神戸のフランス料理店など様々な飲食店で働いた経験がある、シェフとしても実力がある作家です。文中に出てくる料理やデザートのち密な描写も見事でした。しかし、こうして犯人を1時間の番組内で教えられると、興ざめします」(読書家)
詳細に犯人の心理描写を描くミステリー小説を映画化するのは分かる。ときに映画は原作を超える。だが、ミステリー小説をタレントに推理させるほど、ミステリー小説は堕ちたのか。ネットでは、この番組への批判で炎上が相次いでいるが、今回ばかりは炎上させているほうがまともだと思うしかない。
「日本のミステリー小説は、年々、進化している。たとえば5年前の作品を今の各賞に応募してもまず落ちる」(ある賞の審査員)
拓未司は第6回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞した辣腕である。『蜜蜂のデザート』のビストロ・コウタのシリーズのファンも多い。安易にこの番組に小説を渡してほしくはなかった。
「でも大丈夫ですよ。心あるミステリー小説ファンなら番組を見ませんから」(前出・ミステリー愛好家)
同感である。番組製作者よ! 自力でおもしろいミステリードラマを作ってみよ。小説頼みの番組作りは、もうやめていただきたい。
(渋谷三七十)