珍発明を次々に繰り出してきた、「ナニワのエジソン」こと木原健次氏は、テレビや雑誌でも度々紹介されているので、一度は目にしたことがあるだろう。
横になって野球中継を見ていても腕が疲れない、帽子と枕が合体した、「腕まくら帽子」。喋るたびにあご紐にセットしたカウンターが作動する、「万語計」。玄米を入れて走ると、腰の動きで白米になる謎のボックス、「ジョギング精米器」。

あまりにも笑える発明の数々に、「レギュラー決定!」と明石家さんまは叫んだ。
Kinki Kidsの堂本剛も「レギュラーにしたらいいと思います」とコメント。
そんな木原さんの発明人生をまとめたのが、谷本潤一著『ぼくはナニワのエジソンです』(鹿砦社)だ。

現在70歳を超える木原さんが発明に目覚めたのは、39歳の時。マイホームを建ててお小遣いも減ってしまった。最初の動機は、「楽して金儲け」だった。
発明入門の本を読み、「こんなんやったらできるやん」と思い、実際にアイディアは次々に湧いてきて、懸賞に応募した。

最優秀賞、優勝の知らせが立て続けに届き、意気揚々となりかけた木原さんだったが、それは奥さんと長女がそれぞれ応募したアイディアだった。木原さんの発明は、よくて入選止まりで、ボツばかりだった。

「楽して金儲け」など無理だと痛感した木原さんは、それでも諦めない。
熱しやすく冷めやすい性格だと自認する、木原さん。その性格を変えようとはしない。「冷めてもまた、沸かせばいいんです」。ここに、ひとつのことを続けていく秘訣がある。

木原さんは、フツウのまじめな発明を止め、珍発明へと舵を切っていく。
ホースを帽子状に巻いたものを頭に被る、「散水帽子」。水を撒くと、同時に頭を冷やすこともできるのだ。
ゲタの下部に金網が付いている、「潮干狩りゲタ」。これを履いて海に入り砂の上を歩くと、あさりが網の中に入ってくる。
ヘルメットの上に4本の棒が突き出ている、「輪投げケン玉ヘルメット」。ヘルメットからつり下げられた輪を、自分で首を振って棒に入れて遊ぶ。

山のような珍発明の数々は、本書を読んで欲しい。
木原氏はテレビや雑誌で注目され、東久邇宮記念賞まで受賞した。京都精華大学マンガ学部の学生から取材を受け、大阪の教育関係者の前で講演した。商品化された発明もある。

発明人生を振り返って、「ぼくは幸せな男です」と語る木原さん。
本書には、幸せになる秘訣もたくさん詰まっている。

(FY)